ブログ,石田麻子の陰ヨガコラム 2018.12.02
陰ヨガの成り立ちを知っていますか?|石田麻子の陰ヨガコラム
石田麻子です。
陰ヨガにまつわる連載をはじめます。
陰ヨガをまだやったことのない方、以前トライしたけれどひたすらキツかった、あるいは退屈だったからそれ以来やっていない…という方にも、読んでいただけたらうれしいです。
今回は、陰ヨガの成り立ちについて。
陰ヨガでは、ひとつのポーズにつき2分から5分以上と比較的長い時間とどまります。
これは、新しいヨガのスタイルなのでしょうか?
陰ヨガの第一人者、ポール・グリリー先生は著書”yin yoga Principles & Practice”の中で、”old wine, new bottle”「熟成したワインを新しいボトルに入れたようなもの」と表現しています。

Paul Grilley先生
陰ヨガの、ひとつのポーズを数分もの時間、筋肉をリラックスさせた状態でとるこのやり方は、中国に古代から伝わるタオイストヨガの練習方法がベースとなっています。
中国の三代宗教のひとつである道教の修行僧は、長い時間座って瞑想ができることを目的として、気の流れを調和させ身体を癒すためのエクササイズを作り上げました。
これを体系化したものが、太極拳やカンフーです。
ポール・グリリー先生は、武術家でもあるポーリー・ジンク先生から、タオイストヨガの基本を学びました。時は1989年のアメリカ。ポーリー先生のデモンストレーションをテレビで観て、この時すでにハタヨガ歴10年のポール先生でしたが、「自分が今までやってきたヨガとはまるで違う!」と驚いたそうです。
西海岸の一部のヒッピーのものだったヨガが、ビクラムヨガ(ホットヨガブームの火付け役ビクラム・チョーキー先生がアメリカ初のビクラムヨガスタジオを開いたのは1972年)、アシュタンガヨガ(創始者パタビジョイス先生がアメリカではじめて指導をしたのが1975年)を代表とする、運動量が多く汗をたくさんかけるタイプのヨガの登場により、フィットネスブームと相まって多くのひとに広まっていく流れの最中で、ポール先生もまた、ビクラムヨガやアシュタンガヨガなど様々なヨガを熱心に練習し、指導もしていたとのこと。
ポール先生は、タオイストヨガのスタイルに加え、ポーリー先生の身体の柔軟性と、いくつもの大きな大会で優勝しているほどの武闘家なのにそれを誇示するような態度が全くないところに惹かれ、教えを請うたそうです。
タオイストヨガは、ひとつのポーズを長い時間かけてとるプラクティスだけを指すのではありません。動物のまねをして活発に動く陽のプラクティスと合わせて、陰と陽でひとつです。
陰陽は、すべてのものごとには相対する側面があり、これらは補完しあっているという考え方です。陰は固定、静、奥。陽は変化、動、表面といった性質が挙げられます。また、冷/暖、上/下、鎮静/興奮も、陰陽の関係にあります。身体でいうと、腱、靭帯、筋膜などのより硬く乾いた組織は陰、これ対し筋肉や血などのより柔らかく可動性のあるものを陽の組織とします。陰ヨガでは、長い時間かけて筋肉をリラックスさせた状態でポーズにとどまることで、陰の組織に働きかけることができます。

Paul先生の陰ヨガトレーニングにて
さて、ポーリー先生からタオイストヨガを学んだポール先生は、陽のヨガを補完するヨガとして、ひとつのポーズを長い時間かけてとるスタイルのクラスを指導することになりました。
最初の10年は、ポーリー先生への敬意をこめて、「タオイストヨガ」というタイトルでクラスを行なっていたそうです。
それを「陰ヨガ」と名付けたのは、サラ・パワーズ先生です。
おふたりは1990年代初頭に同じスタジオで働いていた同僚で、サラ先生は当時ポール先生のクラスを受ける機会がありタオイストヨガに興味をもっていたことから2000年に開催されたワークショップに参加、そこでおふたりは久しぶりの再会を果たしました。
以降、サラ先生はそれまでヴィンヤサがメインだった自身のクラスに「陰ヨガ」を取り入れるようになり、「流れるように動くスタンディングポーズは陽のプラクティス、長い時間をかけて大地に体を委ねてとるポーズは陰のプラクティス」と説明しました。
さらに、「陰ヨガ」をもっと学びたいならポール・グリリー先生のところで学べますよと紹介したため、ポール先生には「陰ヨガ」についての問い合わせが届くようになったそうです。
文:石田麻子
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