陰ヨガと経絡①｜石田麻子の陰ヨガコラム

ポール・グリリー先生は、陰ヨガのバックグラウンドについて語る時、ご自身が大きく影響を受けた三人の先生の名前を必ず挙げられます。
ひとりは、解剖学の師であったゲーリー・パーカー先生。
ひとりは、タオイストヨガの師であるポーリー・ジンク先生。(前回の陰ヨガコラム参照)

ポーリー・ジンク先生

そしてもうおひとりは、本山博先生(1925-2015)という日本人の方です。東京・吉祥寺にある玉光神社の宮司をされている宗教家であり、東京文理科大学(現在の筑波大学)にて哲学と生理心理学の博士号を取得し、超心理学研究のメッカといわれるアメリカのデューク大学でも学んだ研究者でもあります。1994年に出版された立花隆さんの著書『臨死体験』の中に、本山先生がどんな研究をされていたのかがよくわかる記述があります。(以下、引用)

本山博先生

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ヨガの教義によると、生命エネルギーは体内のナディと呼ばれる多数の経絡を流れていくことになっている。チャクラはナディのセンターという位置づけになっている。しかし、人間の体を解剖しても、ナディもチャクラも見当たらない。だから、西洋医学しか信じない人は、チャクラとかナディというものは、古代インドの何も知らない人間が作り出した仮象の存在と一笑に付している。
漢方の鍼灸でいう経絡、つぼなどという概念も、西洋医学からは、実体のないデタラメとみなされている。
しかし、本山氏は、インドのナディと中国の経絡の類似点に着目して研究を積み重ねていった結果、両者は基本的に同じものだという結論に達した。ナディと経絡が同じだけでなく、中国で「気」と呼ばれる生命エネルギーは、インドの「プラナ」
と呼ばれる生命エネルギーと同じで、それは、ナディ＝経絡系を通路に、肉体の各部に流れていくのだという。
ではそのナディ＝経絡系の正体は何かというと、本山氏によると、皮膚の表皮の下の真皮層の中にある間質液の流れだという。
(中略)
本山氏は、真皮の結合組織の中に、間質液が流れる通路があり、その通路が体中ぬなくはりめぐらされており、それが経絡の実体であるとした。
(立花隆「臨死体験」上巻 p.386〜p.387 )
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本山先生の理論は、先生自身が1960年代以降、インド、アメリカ、イギリス、ブラジル、オランダ、フランスなどの各国に客員教授、客員研究員、特別講演者として招かれ教授されることで、またご著書のうちのいくつかが翻訳されて出版されることで、国外でも広く知られます。
ポール先生もまた、本山先生の著作のひとつ”Theories of the Chakras” (「チャクラ・ 異次元への接点」の英語翻訳版)をアメリカで手に取ったことから本山経絡理論に出会い、そこから間もなくして講演のために訪米された本山先生から直接学ぶ機会に恵まれたそうです。本山経絡理論にそれまでにやってきたアーサナの練習とのつながりを見出したポール先生は、これ以後本山先生のもとで、チャクラや経絡、瞑想について、学ぶこととなります。

文：石田麻子

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