YogaBodyコラム COLUMN

コラム,Joe Millerの解剖学コラム 2019.03.28

ヨガの逆転ポーズはリンパ液の排出に役立つか?

基本的に答えはイエスです。

それはヘッド・スタンドや肩立ちが心臓へ血液が戻るのを促すのと同様に、上下逆さまになることは脚からのリンパ液の排出を助けてくれます。

しかし、リンパ液を循環させるために逆さまでい続ける必要はありません。私たちの体は逆さまにならなくても同じ結果が得られる仕組みを備えています。(身体の循環に逆転がどのように影響するかの説明は、私の以前の記事をチェックしてみたください。 previous post.

リンパ液とは?
私たちの細胞は毛細血管という細かな血管に囲まれています。血液がそこを流れる時、血流中の液体が細胞の間にある空間に染み出します。

こうした液体のほとんどは血流内にすぐに再吸収されますが、一部はそこに留まり間質液として細胞を浸しています。
こうして失われた液体は再び血流に戻す必要があり、それができないと血液量が減りすぎてしまいます。

余分な間質液を血流へと戻すことがリンパ系の仕事です。路面の雨水を集めて川へと排出する都市部の排水システムに何となく似ています。
間質液はまず細かな毛細リンパ管へと流れ込み、そしてリンパ管と呼ばれる大きなチューブへと流れていきます。

こうしてリンパ系に取り込まれた時点で液体はリンパ液と呼ばれるようになります。

リンパ液は四肢から胴体、そして胸郭上部にある鎖骨下静脈へと流れていきます。

私たちの体内のリンパの大部分は、胸管と呼ばれる大きな経路を通り鎖骨下静脈へと排出されます。頭部、頸、そして右腕からは直接鎖骨下静脈へと集められます。
リンパ液はその流れの途中で、体の中でも重要な狭窄部である鼠蹊部、腋、頸にあるリンパ節を通り抜けます。

リンパ節にはリンパ液を浄化するリンパ球という免疫系細胞があり、病原体、がん細胞、破損した細胞の残骸などを破壊します。

リンパ循環重力に逆らってリンパ液をポンプで循環させない限り、間質液はすべて下脚部へと集まってしまいます。

しかし幸いなことに私たちの体にはそれを防ぐ仕組みがいくつか備わっています。
リンパ系には心臓のような主力となるポンプが存在しませんが、リンパ管を取り囲む筋肉の壁がリズミカルに収縮と弛緩を繰り返すことによって液体を上方へと押し上げます。

血管と同じく一方向弁があり、それによって逆流を防いでいます。

私たちが体を動かす時に、骨格筋、特にふくらはぎの筋肉が収縮、弛緩することでさらに循環が促されます。

「呼吸ポンプ」もまたリンパ液を腹部から胸へと引き上げる助けになります。息を吸う時に胸部に陰圧がかかることで胸管を通してリンパ液を引き上げます。

ヨガの逆転ポーズはリンパ液の排出に役立つのか?
それは可能です。

なぜなら重力には液体を地面へと引きおろす力があるので、体を逆転させることは体の下部にあるリンパ液の排出を助けることになります。

ではリンパ液を循環させるために逆転する必要があるでしょうか?

まったくありません。

私たちの体にはそれを行うためのさまざまな仕組みがあるからです。しかし逆転は助けにはなります。

だからこそ、長い1日を立って過ごした後、単に脚を壁にもたせかけるシンプルな逆転がとても心地よく感じられるのです。

(イラスト左上から)
頸部リンパ節
乳腺のリンパ管
乳糜槽
腰リンパ節
骨盤リンパ節
下肢下部のリンパ管
(イラスト右上から)
胸管
胸腺
腋窩リンパ節
脾臓
上肢のリンパ管
鼠径リンパ節

 

日本語訳 Yo Miyamura

原文リンク
Do yoga inversions help drain lymph?

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この記事を書いた人

Joe Miller

Joe Millerは、1980年代よりヨガを始め2000年よりヨガティーチャーとして現在までNYで活躍しています。
2009年、コロンビア大学の応用生理学において修士を取得。
解剖学を探究する中で人体解剖に携わったり、
フェルデンクライスのプラクティショナーの認定を受けるなど常に学び続けています。
2000年より人気ヨガティーチャーCyndi Leeが主宰したNYの伝説的なヨガスタジオOMヨガセンターで12年間指導し、指導者養成コースの解剖学主任として10年以上に渡り多くのヨガティーチャーを育てました。
現在はNow Yoga NYにてヨガクラスを指導し、ヨガメディアでの執筆の他、各国で解剖学講座を行っています。
豊富な経験と温和で落ち着いた人柄とオープンでフラットな指導が人気です。

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