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コラム,Gregor Maehleのコラム 2019.08.03

逆転のポーズについてのアップデート情報

2018年8月25日 グレゴール・メーレ

近年、肩立ちや倒立ポーズ(ヘッドスタンド)のような、逆転ポーズに対して悪い事を書かれているのを頻繁に目にします。

そのほとんどは頸椎椎間板の関節炎に関してばかりでしたが、どちらのポーズでも発生する可能性があるのに関わらず、特にヘッドスタンドが頭部への負担が大きいということでデメリットが一番大きいポーズという説明になっていました。 この怪我の全ては、高い水準でポーズを練習することによって避けられるのです。
つまり、肩立ちでは頸椎にかかる圧力や重さを避け、倒立時にも頭にかかる圧力を最小限に抑える必要があります。

私は以前から、私の著した本やブログ記事の中で、この2つのポーズの正しい練習の仕方を説明してきました。
しかし、この怪我の問題は持続しているように思われ、ごく最近読んだ記事の中では、私は肩立やヘッドスタンドをアラインメントがとても重要で、バランスが取れていれば、力を使い努力している感覚にはならないと説明してありました。

ただ、先ほど説明したデメリットを防ぐためには、両方の姿勢を強度の高いポーズと見なすことが不可欠です。
このアプローチについて説明する前に、なぜ逆転を行い、それを出来るだけ長い間保持した方が良いのかのおさらいをしましょう。

ヨガの基本的な経典の1つは、Yoga Goraknathと呼ばれるもので、Yoga Gorakshatakaによる100篇の詩です。
この短めの経典の10%の内容を、シッダ(siddha)は逆転の長所を称賛することに捧げています。
彼は、逆転ポーズをヨガの8支則の5番目のプラティヤハラ(pratyahara)を達成するための最も直接的な方法だと考えています。
プラティヤハラ(pratyahara)の目的は、外的または感覚的刺激に対して独立性を得ることです感覚的刺激に依存している限り、瞑想を成功させることは困難なのです。

プラティヤハラ(pratyahara)との逆転ポーズの関係は次のとおりです:ヨガ・ヤジュナバルキャ(Yoga Yajnavalkya)では、安静時に物理的肉体から外側12アンギュラ(約25 cmまたは10インチ)ほど広がるプラナ体(エネルギー体)の画像が描かれ、まるでオーラのように広がっていることがわかります 。
(そのオーラは)あらゆる衝動に対して反応し、プラナの先がさらに広がり、感覚的対象物に付着します。
プラナが自分自身を感覚的対象物に付着させるとすぐに、マインドはこの状態を「これ(感覚的対象物)をただ持ちたい」と解釈します。
この思考とプラナの関係はすでにハタヨーガ プラディーピカー(Hatha Yoga Pradipika)の中で、「プラナが行くところにはヴィリッティ(vrtti)(思考)が動いていき、ヴィリッティ(vrtti)が行くところにプラナもついていきます。
牛乳と水が一度混ぜ合わせると分離するのが難しいように、マインドと呼吸を分けることはできないのです。」と、説明されています。

プラナ体が感覚的対象物と接触するとすぐに、マインドはその接触を「これ(感覚的対象物)を持たなければ」と解釈するでしょう。
これはあなたが熱望していた相手と結婚し、数年後別れたときに、 “私は何を考えていたんだろう?” と問いかけるときに気がつくかもしれません。
または、成功するであろうと思っていたベンチャービジネスが大きな失敗で終わってしまったり、不動産高騰の流れにのって投資したものの、その後不動産価格が大きく下落し、全てを失っていた瞬間に気がつくかもしれません。
もちろん、今あげたように劇的ではない例がたくさんありますが、同じメカニズムの働きが存在し、すべての例の中で重要な構造要素は、選択の欠如のように見えます。
私たちは「ただただそれが必要だったのです!」ただ、もしこのような感覚的対象物に固執するプラナの突出を妨害してくれるものがあったとしたらどうでしょうか。
この場合、「欲しい」という考えは起こりません。それでもまだ衝動を感じるかもしれませんが、選択の欠如からくるものではないでしょう。

ヨガにはこのような練習をするプラティヤハラ(pratyahara)と呼ばれるテクニックが実際にあり、それは、すなわち感覚的刺激から独立性を得るためにデザインされたものです。
それは、プラナヤマテクニック(主に息を止めること)、ラージャヨガの方法(瞑想中のムードラとバンダ)、そしてハタヨガの方法の3つの種類で構成されています。
理想的にはもちろん3つのアプローチすべてが組み合わされることで、それは一番優れたものになります。

ハタヨガのプラティヤハラへのアプローチは、喉のチャクラ(肩立ちのポーズをを通して)と第3の目のチャクラ(ヘッドスタンドを通して)でプラナの動きを止めることです。
ハタヨガのアプローチは、わかりきっていますが、実装が最も簡単な技法です。たった1〜2分の間、ヘッドスタンドや肩立ちをホールドしているだけでは、マインドにはほとんど影響を与えません。
長い間逆転をすることで、マインドに有益な効果をもたらし、瞑想の準備ができます。その効果は私自身なんと説明したら良いかわからないほど、深く大きなものです。
ここまで逆転ポーズを深める必要がある理由を調べてきましたが、それでは次に逆転ポーズを安全に行なっていく方法をみていきましょう。

このブログ記事は、あくまで私が著した本の中にある逆転についての説明の参考として読んでください。
本の中では、高血圧などの禁忌が見られる場合や、その他の姿勢の側面について説明しています。
ここでは私は逆転ポーズの一つの側面、強さ、に焦点を合わせていきたいと思います。

肩立ちをしている間、生徒達はしばしば頭の後ろを床に押しつけるようにするか、(ジャーランダラバンダ(Jalandhara Bandha)を働かせるように)あごを胸に押し込むかどうか迷います。
答えは「両方」です。両方の動作を同時に実行させるには、亀が首を引っ込めるように、首をできるだけ胸腔の方向に引き込むようにします。

これは、直立姿勢から、耳に肩を近づけるように肩を上げる動きと似ています。肩立ちのポーズをとっている時に、つま先で天井に触れようとしている姿勢もイメージしてみてください。
あるいは、自分の背骨を上方に引き上げるようにして床から離す動きと捉えても良いでしょう。
これら全てのケースで、頸椎の背部が床から持ち上げられています。

床から背骨を離し、持ち上げることができない場合は、床に頭を置き肩から下には肩を置くためのブランケットを1、2枚を使用することをおすすめします。
もしあなたが肩立ちのポーズを長い間ホールドつもりならば、どのようなケースでも私はブランケットをプロップとして使用することをおすすめします。
肩立ちのポーズをホールドする時の基準は、後頭部で床を押すと同時にあごを胸に押し込むスキルであり、その力は首を胸腔の方に引き込みながら背骨を床から持ち上げ、肩、肘そして後頭部で床を押すことで生まれます。これは継続的な努力が必要で、もしどこかの地点で疲れを感じたのならポーズから抜けてください。

次にヘッドスタンドのポーズを見ていきましょう。

まずは頸椎と腰椎の大きさの違いを簡単に想像してみてください。
腰椎はとても大きく作られていて、腰を支えるため、たくさんの大きな筋肉が腰椎に繋がっています。
椎骨自体が非常に強くできているのも、付着した筋肉からくる、大きな力に耐えるためです。

頚椎は腰椎とは作りが違います。
腰椎と比較すると、頚椎は小さく、その理由は椎骨にかかる体重があなたの頭よりも少し重たいぐらいであり、その重みを支え、運ぶように設計されているからです。
頭は体重全体の平均7〜9%を占めています。
あなたがヘッドスタンドをとっているとき、頭が床の上に固定されて動かないのなら、頚椎への負担を考慮すると、腕と肩は体重の約80%を支えなければなりません、

これはかなりの腕と肩のトレーニングです。
あなたは(ポーズを取っていると時に)これらの体の部分(腕と肩)がそれだけの体重を支えていると感じる必要があります。
単に頭の上でバランスをとれたからといってその姿勢のままリラックスしないでください。
どの時点でも、頭に多くの体重がかかっていると感じる場合は、シンプルにポーズを解いてバラアサナで休んでください。
あなたの体重を支える力は時間の経過とともに強くなっていきます。

前腕を使う強度の強いバランスポーズやヴィンヤサの動きを重視していくことで、(体重を支える力の)改善を早めることができます。

強さを養い、両方の逆転ポーズをとるときに頭と頸椎椎間板にかかる負担を減らすことができれば、より多くのポーズの恩恵を得ることができ、デメリットを最小限に抑えることができるでしょう。

 

日本語訳 :Rolf  Marika

原文リンク:https://chintamaniyoga.com/asana/inversions-update/

 

Gregor Maehle 来日情報

この記事を書いた人

Gregor Maehle

グレゴール・メーレは40年前、ヨガをはじめました。

1980年代半ば、彼はインドに定期的に旅をし、
様々なヨガ行者や指導者、マスター、と共に伝統的なインドのヨガを学びました。
Mysoreで14ヶ月を過ごし、1997年にはAshtanga YogaをK. Pattabhi Joisによって指導者の認定が与えられました。

グレゴールメーレは解剖学の知識に定評があります。
彼は健康医学者の学位を得て解剖学的知識そして、歴史、哲学、比較宗教を学びました。

また、哲学やサンスクリットなどインドの古典の知識も深く、
グレゴールメーレは、1対1で経典の指導を B.N.S. Iyengarを通して8ヶ月学び、
Narayanachar教授とChandrasekhar教授のもとでSanskritを学びました

彼は隠遁者としてインドに数年間住み、サンスクリットとヨガ聖書を学び、ヨガをしていた経験もあります。

1996年にはオーストラリアのパースにて彼の妻、モニカと一緒に、8 Limbsを開設し、現在も活動をしています。

グレゴールメーレの書籍は世界中で評価の高い「教科書」として認知され、世界中で75,000部のコピーがあり、7つの外国語に翻訳されています。
彼は多くの国に招かれ、多数のヨガ雑誌に寄稿したりインタビューを受けたりしています。

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