YogaBodyコラム COLUMN

Joe Millerの解剖学コラム 2019.04.24

シャバーサナで、身体に起きていること

ヨガを練習するほとんどの人が、激しいヨガの練習後にシャバーサナで横たわる感覚が大好きです。
それが心地良いということは皆さんご存知のとおりだと思いますが、ではシャバーサナの間、身体の中では実際何が起こっているのでしょうか?

シャバーサナの姿勢をとると、私たちの体は床によって支えられています。
ということは少なくとも、理論的には、私たちは自分の体を支えるために筋肉を収縮させる必要がありません。
呼吸に使われる筋肉のみが働いていれば良いわけです。

そしてもちろん、私たちが習慣的に筋肉を収縮させてしまうことにも皆さんは気づいてい るでしょう。
気づいた時にそのような習慣的な収縮を解放することは良いことではありますが、同時に、受動的な筋肉の緊張を避けるためには自分の体をうまく支えることも重要です。

筋肉が、受動的にも能動的にも緊張を引き起こすと聞いて、皆さんはもしかしたら驚いたかも知れません。
能動的に筋肉を収縮させるのではなく、一時的なストレッチによっても筋肉の受動的な緊張は増します。

例えば、腰椎の前面から大腿骨の上部へと繋がる腸腰筋ですが、通常、脚を伸ばして仰向けになることでストレッチされます。
この受動的な緊張が腰椎を引っ張るせいで、人によっては腰部の不快感が起こります。
膝裏をボルスターで支えることによって腸腰筋が緩まり、受動的な緊張を軽減し、腰部を床へと降ろしリラックスを促すことができます。

シャバーサナの間、私たちの血圧と心拍数は下降しますが、シャバーサナの体勢にもその 一因があります。
立ち上がっている場合、心臓は重力に逆らいながら脳へ血液を送り込ま なければなりません。

私たちの体の機能を無意識にコントロールする神経システム、自律 神経系によって、脳が十分な酸素を常に得ることができるよう血圧が維持されています。
しかし私たちが体を横たえると、心臓は重力に逆らってポンプを働かせる必要がもはや無くなります。
なぜなら脳も心臓も同じ高さになるからです。

すると頸動脈にある圧力セン サーから送られる信号に反応して、私たちの自律神経系は心拍数を下げることで脳に血液 が流れ込み過ぎるのを防ぎます。
意識的に筋肉の緊張を解くことによっても、心臓がこなさなければいけなかった働きの量を減らすことが可能です。

シャバーサナから起き上がると、私たちの神経システムは心拍と血圧を上昇させ元に戻すことで、脳へ流れ込む血液の量を保ちます。
シャバーサナを終える時には、ゆっくりと起 き上がることで神経システムがこういった調整を行えるよう促し、立ちくらみを防ぎます。
私たちの自律神経系は二つの系統に別れています。

一つは交感神経系、もう一つは副交感 神経系です。交感神経系は、例えば激しいヴィンヤサヨガの練習もしくは脅威への反応など、内容に関わらず行動への準備を担当します。
そして副交感神経系は「闘争/逃走」反 応を抑えます。

エクササイズの後は座った姿勢や立ったままでいるより、仰向けになることで、より素早く循環器系を副交感神経が優位な状態へと移行することができます。
副交感神経系の主要な神経である迷走神経、この神経がシャバーサナ中の私たちの心拍を遅くします。

この働きを「迷走神経ブレーキ」と呼びます。
このブレーキが良く効いてい ると私たちの心拍変動は改善され、それはまた自律神経系の健康を表す指標にもなります。連続的なストレスに晒されると、交感神経系が優位な状態へと傾いていき、それによ って心拍変動は減少してしまいます。

定期的にシャバーサナを実践し、副交感神経が優位 なリラックスした状態に移行することで、心拍変動の改善をサポートするわけです。

というわけで、シャバーサナが気持ち良いことに疑いの余地はありませんね!

 

日本語訳 Yo Miyamura

原文 ヨガフリーペーパー YOGAYOMU59号

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この記事を書いた人

Joe Miller

Joe Millerは、1980年代よりヨガを始め2000年よりヨガティーチャーとして現在までNYで活躍しています。
2009年、コロンビア大学の応用生理学において修士を取得。
解剖学を探究する中で人体解剖に携わったり、
フェルデンクライスのプラクティショナーの認定を受けるなど常に学び続けています。
2000年より人気ヨガティーチャーCyndi Leeが主宰したNYの伝説的なヨガスタジオOMヨガセンターで12年間指導し、指導者養成コースの解剖学主任として10年以上に渡り多くのヨガティーチャーを育てました。
現在はNow Yoga NYにてヨガクラスを指導し、ヨガメディアでの執筆の他、各国で解剖学講座を行っています。
豊富な経験と温和で落ち着いた人柄とオープンでフラットな指導が人気です。

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