松本くらのコラム,コラム,ヨガと体のQ&A 2021.01.26
松本くら先生がクラニオセイクラルに魅せられ続けるワケ③
私が施術するクラニオセイクラル・バイオダイナミクスのアプローチは、先のコラム「クラニオセイクラルの歴史」で触れたように、ウィリアム・ガナー・サザランド博士の晩年の研究に端を発する方法です。
サザランドは実践者として、仮説→検証を繰り返す中で新たな発見を重ね、この方法と理論づけに至りました。
その当時この方法は、理論としては科学的な実証を持たない部分もありました。
理論的裏付けは、その後の科学の発展の中からやって来たのです。
[観察者は、観察される者に影響を与える]
(量子)
これは、量子物理学が、主に量子(光子)に関する実験を観察する中で発見した、事実です。
さまざまな研究により、すべての素粒子は相互関係にあり、それぞれが影響し合っている、ということが証明されています。
「二つの量子の一部が宇宙の反対側に配置されたとしても、一つの素粒子が動くと、もう一方の素粒子もそれに応じて反応する」ということも、証明されています。
量子物理学は難解で、私も全体が理解できている訳ではないのですが、この事実は判りやすいと思います。
[見る者]と[見られる者]の間で起こることは、その二者の関係性によって変化する、
ということですね。
暖かい目で見られれば、見られた者は安心します。
意地悪な目で見られたら、見られた者は緊張します。
「神はヒトとヒトの間に宿る」という印象的な言葉を、フランス映画の中で記憶していますが、同じことを言っている気がします。
この理論背景は、まず二者の間に[安全な空間を作る]という、バイオダイナミクスの施術の始め方に反映されています。
施術者がまず[ニュートラル]の状態に入るのも、そのためです。
その行為が、空間を整え、クライアントの存在全体を落ち着かせ、安心させた時、
自己治癒のエネルギーを招き入れる準備ができます。
施術中も、施術者は[ニュートラル]をキープし続けます。
クライアントや状況の展開(あるいは何も起こらないこと)に巻き込まれることなく、空間の全体性を保持して、見守り続けます。何かが満ちて来るのを待つ時間です。
クライアントへのこの非侵襲的なスタンスも、それからの展開の鍵になります。
[見る者]と[見られる者]の間に、調和をもたらすからです。
[胎児胎生学の発達]
(6週間目の胎児)
MRI等の技術革新によって、人間の生体内で展開していることが観察できるようになり、胎児胎生学は一気に進歩しました。
受精の瞬間から、この世界での誕生に至るまでのプロセスが、今や克明に判ります。
そしてそのプロセスは、今生きている私たちの身体の歴史の一部、でもあります。
この胎生学が立証した様々な事実も、バイオダイナミクスの施術の理論背景となっています。
施術中にキャッチされる動きに、この胎生のプロセスの一部を見る時があります。
それは、今生きているこの身体が、胎生時の記憶も保持し、その記憶も私たちの全体性の一部であることを、教えてくれます。
[世界との新しい関わり方]
量子物理学や胎児胎生学の新しい発見は、世界の見方、世界との関わり方に、新しい視点を提供します。
それを理屈として判るのではなく、体験の中で実感させてくれ、世界との新しい関わり方へとつなげてくれるのが、バイオダイナミクスのアプローチです。
そしてそれが、私がクラニオに魅せられ続ける3つ目の理由です。
未だ未知のことの方が多い、命の存在、宇宙の仕組みへの探索の手掛かり、です。