松本くらのコラム,コラム,ヨガと体のQ&A,講師紹介 2021.03.31
コロナ禍における生活の変化に役立つクラニオセイクラル②
自律神経系に「安全・安心」のメッセージを送ることで、自らの身体を、最も安定した腹側迷走神経系に誘う方法
―前回は、身体に意識を向けて[緩める]時間を持つこと、気持ちよく息を吐いて呼吸を深めること、視界を拡げること、をご提案しました。
どれも、自分の意識を[今・ここ]に戻す提案です。
野放しにしておくと、思考の渦の中で[不安含みの未来]を彷徨ってしまう意識を、この存在の今 に留めておく小さな工夫ですね。
小さいけれど、やるかやらないかでは大違い、それを味わっていただけたらな、と思います。
もちろん全部を、という訳ではなく、気持ち良かったのをね!
[いつだって身体のどこかにある安心のスペース]
身体の内にはどんな時も、この[安心のスペース]が存在しています。
たとえば今これを書いている私の身体を感じると、ソファと触れ合っているお尻と脚からは仄かな暖かさが伝わって来ています。
その暖かさを存分に味わってみると、ふっと上半身から力が抜けて、お尻と脚はますますソファに密着し、暖かさが増します。
あ、支えられているな、と感じ、ため息が出ます。すると外で鳴き始めたウグイスの声が耳に入って来て、春だなあ・・・マッタリ。
こればかりでは仕事が進まないのも確かですが、存在は安心に包まれます。
クラニオではこの方法を、[身体内のリソースにつながる]と言います。
痛みに悩まされているその瞬間でも、痛みから離れた身体部分には、暖かさが感じられたり、拡がりが感じられたり、確かさが感じられる「どこか」が存在しています。
そんな「どこか」を見つけて、そこを味わっていると、「安心」は戻ってきます。
身体内にはどうしても見つからない時は、「安心している豊かな時間」の体験を思い出し、
その時の匂いや景色、音や触覚を蘇らせると、必ず身体内のどこかがくつろぎます。それを見つけて味わう、という二段構えの方法もあります。
[グラウンディングする]
(「身体のミッドライン」の絵)
[グラウンディング]はさまざまな技法や瞑想の中で重視されますが、クラニオで作るグラウンディングは身体的です。
身体を通る中心軸をしっかりと意識し、その一番下の骨盤底から地球の中心に向かって、真っ直ぐに軸をつなげる、という方法です。
そのイメージをしっかり作っていく時間がない時は、床と接している足裏やお尻に意識を向けて、そこに重みを委ねていきます。
イメージを使うけれど、そこに身体感覚も伴わせていく、というのが特徴でしょうか。
身体感覚が伴うと、イメージだけのフワフワした感じより、何かがしっかりするようです。
そこで生じる身体の安心感は、繋がっている、とも言えるし、委ねる感覚に戻る、とも言えます。
自分が、地球で生きている生き物の一つに戻る感覚でもあります。朝になれば陽が昇り、夜になれば月が出る、この地球の営みの一部に戻る作業、とも言えますね。
[スペースを拡げる]
「エーテル体」
自分の身体の周囲1メートルの空間は、エーテル体と呼ばれる[自分の領域の一部]です。無意識層に呼応する、という説もあります。
視界を拡げながら、このエーテル体を自分の身体の一部のように感じ取っていく、
エーテル体に知覚を拡げていく、という作業は、実はクラニオの[ニュートラル]に欠かせない要素です。
そしてそれに慣れていくと、身体が周りから支えられているような、あるいは身体の境目が拡大していくような、とても自由な感じがやってきます。
身体の方もこの感覚が好きなようで、ふんわりと安心して拡がり、緩みます。
クラニオを続けていて、細胞ってスペースが好きだなあ、と思います。
観られたがっているのと同時に、拡がりたがっている。皮膚一枚の内側はいろんな器官でギッシリ、という解剖図のイメージはお好みではなさそう。
それぞれの原子の核の周りには、何もない広大な空間が拡がっている、という量子物理学の発見がありますが、どうもそちらで観てもらう方がお好みのようです。
慣れるのに少し時間が掛かるかも知れませんが、閉塞感を解いて周囲の世界と繋がっていく、喜びを伴った[安心]への戻り方です。
[腹側迷走神経へと回帰する基本エクササイズ]
最近まで翻訳を手伝わせていただいていたデンマークのボディワーカー、スタイン・ローゼンバーグ氏が勧める、ポリヴェーガル理論に則った[安心]への回帰方法です。
誠にフィジカルで、試してみると大変効果的な方法だと感じました。
仰向けに寝てリラックスし、両手の指を組んで後頭部に当てます。曲げた腕が床と触れている楽な姿勢ですね。親指が、後頭骨と首の境目の柔らかい部分、俗に言う「ボンのクボ」に当たります。
両手の中に後頭骨を休ませて馴染ませ、眼だけを動かして右を見ます。そのままのんびり合図を待ちます。合図は、「ため息・あくび・喉ゴックン」のどれかです。「喉ゴックン」は、思わず唾を飲み込むことね。長くても1分待っていれば、いずれかの合図がやってきます。そうしたら眼を真ん中に戻して休ませ、左側でも同じことをします。眼を真ん中に戻したら終了、あっという間のショートワークです。
目の動きを司る脳神経と後頭下筋の支配神経が直接連結していることに着目し、この動きで後頭下筋を緩め、後頭骨・頚椎1番・頚椎2番のアラインメントを正常に戻すワークです。
それによって間近を通る椎骨動脈の血流を増し、脳と脳幹への血流を回復させます。
やり方に慣れたら、座ってやるも良し、立ってやるも良し、いつでもどこでもできます。
ローゼンバーグ氏は、腹側迷走神経系が正常に働いているかどうかをチェックする方法も編み出しており、それでチェックすると、クライアントのほぼ全てがこのワークで腹側迷走神経機能を回復したと述べています。
自分で試している内に効果が実感できたので、今はヨガのクラスやクラニオセッションの最初に皆さんに試していただいていますが、好評です。
他にも彼の編み出したワークがたくさん載っている本が、おそらく今年前半には出版される予定。面白いですよ!